MD-ing講座21

各種分析手法・その1

今回から各種分析手法について説明いたします。次のような手法です。

1.時系列(ヒストリカル)分析

時間の経過の中で傾向をみる分析手法です。

(1)その現象が増えていく状況なのか、減っていく状況なのか、あるいは水平で変化がない状況なのか、といった大きな流れを作っていく力。
これを傾向変動要因と言っています。
具体的には、「12ヶ月移動平均法・・・Zチャート」という手法で表します。販売分析・販売予測などに活用できます。
式は、当月の移動年計売上高=(前月の移動年計売上高+本年当月の売上高)―前年当月の売上高

(2)傾向を長期的に観察すると、普通1年以上の波長を周期としてやや定期的に上昇したり下降したりする傾向が現れる。
これを循環要因と言っています。
具体的には、「最小自乗法」という手法で表します。年度の販売予測に活用できます。

(3)春夏秋冬で変動する要因を季節変動要因と言っています。
具体的には「季節指数法」という手法で表します。これには普通最低3年分の月別データが必要です。毎月の販売計画・仕入計画に活用できます。

(4)ライフサイクルを分析する。
商品や市場が現在、導入・成長・成熟・衰退のどのポジションにあるのかを見極め、それぞれのポジションで対応策を検討する手法です。商品によってもそのサイクル全体の期間が違いますが、消費財については、最近非常に短くなってきているのが特徴です。

2.ABC分析

(1)商品を管理する上で、どの商品に重点をおいて管理するのが効果的かを思考する場合、ABC分析は、一つの要因(ex.販売量・販売額etc)で重点管理の対象を明確にする手法です。
上位20%を押さえれば全体の80%を把握できる。という考え方です。

3.マトリックス分析

(1)商品を管理する上で、どの商品に重点をおいて管理するのが効果的かを思考する場合、マトリックス分析は、二つの要因(ex.ABC分析と企業成長率・売上数量と粗利益率etc)で重点管理の対象を明確にする手法です。BCGのポートフォリオ分析が有名です。

4.ランチェスター分析

(1)競合との相関をシェア構造で分析する手法です。

・目標数値の基準
独占シェア :73.88% トップに立つための上限目標
相対シェア :41.70% トップに立つための第一次目標
トップシェア :26.12% トップに立つための下限目標
影響シェア :11.00% 当該業界に影響を及ぼす最低限のシェア目標
存在シェア : 7.00% 当該業界で存在価値が認められるシェア
射程距離 :√3 ・・市場全体の中で1位になるための2位との差
: 3 ・・一顧客の中で1位になるための2位との差

この続きは次回です。

(2000/8/8)

MD-ing講座20

棚割提案のポイント2

四つ目はいよいよ「棚割分析」の項目です。
現状の棚割が、どの様な考え方で構成されているのかを分析していきます。
ここでは、どんなデータを使用し、分析するかということがポイントになります。

まず、どのようなデータを使用するかですが、以下のようなデータが考えられます。

(1)業界データ(市場動向・出荷etc)
(2)商圏データ(デモグラフ・食慣習・慣習・競合店舗etc)
(3)当社実績データ(全体・サブカテゴリー別・SKU別etc)
(4)シンジケートPOSデータ(全国・地域・県内etc)
(5)提案企業・店舗POSデータ(全店・地域・店舗・自社平均etc)
(6)食トレンドデータ(各種雑誌・各種調査データetc)
(7)当該カテゴリーの各種消費・マーケティングデータ
(8)商品マスター(商品分類に関するデータetc)
(9)現状棚割表(標準パターン・提案店・競合店etc)

次に分析項目ですが、以下のような内容になります。

(1)ヒストリカル(時系列)分析
(2)ABC分析
(3)マトリックス分析
(4)ランチェスター分析
(5)比率と趨勢比分析
(6)比較分析
(7)標準偏差分析(注:詳しくは次回ご説明いたします)

(1)品揃え面・・・選択のし易さについて

◎扱いある・扱いない/扱う・扱わない
※既存商品 ※新商品

・商圏内消費者嗜好
・市場の期待度/話題性
・市場の伸び
・GRP(広告投下量)
・バイヤー意向
・各種販売条件
・他の店舗・エリアで売れている

◎売れている・売れていない(数量・金額)【シンジケートPOS・提案企業・店舗POS】
※シングルABC
※マトリックス(クロス)ABC

◎儲かっている・儲かっていない(粗利貢献度)【提案企業・店舗POS】
※4POS比較(全国・エリア・県内・提案店舗)
※2POS比較(全店平均と提案店)

◎分類基準
※商品マスター
※商品マトリックス

◎サブカテゴリー分析【アソシエーション構成比表】
※スペース効率 ・スペース ・売上数量 ・売上金額 ・粗利益額(率)
※メーカー数
※ブランド数
※SKU数
※フェース数

◎価格構成(予算内で収まる購入のし易さ)【現状価格構成比グラフ】
※ゾーン
※ライン数
※プライス・ポイント
※プライス・レンジ

(2)ゾーニング面・・・見易い・分かり易いかについて

◎棚割図と各種ゾーニング図
◎陳列手法
◎ゴールデン・ゾーン配置(約80~150cm)
◎ゴンドラの関連

分解が終わりましたら、特徴と課題を整理します。
そして、提案書にまとめます。まとめる場合、次のようにすると ストーリー性があり、分かりやすくなります。

(1)当社の取組み姿勢について
(2)市場動向
(3)消費者動向
(4)業態別カテゴリー動向
(5)カテゴリー動向(現状と将来)
(6)新製品
(7)新商品も取り入れた棚割
◎ゴンドラ配置の変更
◎品揃えの変更
◎価格政策の変更
◎ゾーニングの変更
◎新商品の提案
(8)販売促進(マス・店頭販促)
(9)販売条件
(10)謝辞と今後の取組み姿勢について
◎課題があれば、今後の解決策とスケジュールについて

(2000/06/13)

MD-ing講座19

棚割提案のポイント1

今回から、棚割提案のポイントについて説明致します。 棚割提案を実行する場合の最大のポイントは、

第一は、「総ての必要情報は店頭にある」
第二は、「仮説をどう設定するか」
第三は、「相手を徹底的に知り尽くす」
第四は、「いつも自分が提案を受ける立場で考える」

これから、提案項目はどんな内容が必要なのか、プレゼンテーションのポイントは何かについて述べていきますが、基本は「店頭」にあるということを再度確認しておきます。小売のMD-ing施策、卸のMD-ing施策、競合メーカーの戦略、これら総てが店頭に現れます。
そして、「仮説」の抽出は、それぞれの商圏特性から、売場から、競合店舗から、各種データから導き出して、売れない原因は何か、売れている原因は何かを探っていきます。 また、以上の作業を通じて、提案企業のMD-ing政策を深く理解し、いつも自分が提案される立場だったら何を期待するかを考えながら提案書を作成していきます。

では、棚割提案に必要な項目について解説していきます。
一つ目は、「当社の提案企業に対する政策」です。
当たり前のことと思われますが、実は非常に重要な項目です。
企業コンセプト、事業コンセプト、商品開発コンセプト、当社の取り組み姿勢、サポート内容と実行プランなど「これなら安心して、当該カテゴリーを任せられる」と相手企業に思ってもらえるかどうかがこれによって決まるからです。具体的項目は、以下のようになります。

(1)企業目的
(2)事業領域
(3)企業指針
(4)行動指針
(5)商品政策
(6)価格政策
(7)チャネル政策
(8)販売促進政策
(9)MD-ingサポート政策

などです。

二つ目は、「市場動向」です。
当該カテゴリーの市場動向について詳しく説明する項目です。当該市場は成長しているのか、横ばいなのか、衰退しているのか。メーカー動向は、消費者の嗜好の変化は、業界動向は、などがこれに当たります。この事によって、売場の拡大、縮小。サブカテゴリーの拡大、縮小。メーカーの選択。ブランドの選択。商品の打ち出し方の方法などが変わってきます。
まとめますと、以下のようになります。

(1)全体動向(原料環境・製造方法・海外動向・競合企業動向)
(2)カテゴリー・サブカテゴリー別動向(構成比トレンド)
(3)メーカーシェア(都道府県別・エリア別)
(4)チェーン内メーカー別シェア(SKU別・フェイス数別)
(5)全体消費者動向(嗜好・消費サイクル・消費量・消費金額)
(6)業界トピックス

などです。

三つ目は、「商圏分析」です。
提案する小売企業の商勢圏の状況、および店舗を中心とした商圏の状況を。こちらとしてどう提案に活かしているかを説明する項目です。これにはニーズの把握から見た内容、競争環境から見た内容があります。
ニーズの把握から見た内容は以下のようになります。

(1)商圏内小売業業態別店舗数と構成比の把握
(2)競合企業の設定
(3)競合店舗の設定
(4)競合店舗との比較図作製

*開店
*営業時間
*売場面積
*店舗レイアウト
*駐車・駐輪台数
*チラシ比較
*当該カテゴリーの商品構成比較

以下次回に続きます。

(2000/4/12)

MD-ing講座18

フェイシング

今回は、棚割の4大要素最後の段階「フェイシング」についてです。
棚上のゾーニングが決まりましたら、いよいよ各ゾーニング内にどの商品を、何フェイス、幾つ陳列するかの段階です。
ここでの注意点は、

1.各々の商品には、時間の経過と共に高回転商品から中回転、そして低回転と、また逆に低回転から中回転、そして高回転へと売れ行きに差が出るということ。
2.商圏状況の変化、顧客の嗜好の変化など環境の変化に応じた商品の入れ換えが適時要求されるということ。

「1」については、POSデータなどを見ながら、売れ始めてきたらフェイス数を拡大していき、売れ行きが鈍化してきたらフェイス数を縮小していくことが必要です。これを怠りますと、売れている商品は欠品し、売れていない商品は過剰在庫として何時までも売場に置かれ販売効率が低下してしまいます。
理想は、どの商品も棚単位で過不足無く同時に売れて行くことです。
ポイントは、各商品の陳列量を、各商品の販売量に応じた状態にすることです。この事により、発注や補充がコントロールでき、顧客に対する販売機会ロス防止策になるわけです。
これを”バスタブ理論”と言っています。(バスタブの栓を抜くと水面が平行に下がって行く状況)

※陳列数量の決定については、MD-ing講座(8)を参照して下さい。

「2」については、定期的な来店顧客調査により、商圏内の顧客が欲している商品を選択し、テレビ、雑誌などマスコミ情報のウォッチングを参考に、その商圏独特の商品や季節・催事・トレンドに合わせて各商品のフェイス数を変更したり、話題の商品のフェイス数を拡大したり、こまめな対応が必要になります。

フェイシングを実施する場合の注意点は以上です。次にフェイシングの作業上のポイントについて述べます。

(1)陳列位置面・・・・・・・・・・・ゾーニング内・他のゾーニングとの関連性
(2)フェイス数面・・・・・・・・・・上記1参照
(3)在庫数面・・・・・・・・・・・・・MD-ing講座(8)参照
(4)価格面・・・・・・・・・・・・・・・ゾーン・ライン・ポイント・レンジの設定
(5)陳列演出面・・・・・・・・・・・POP
(6)商品理解度面・・・・・・・・・特に新製品の場合など、使い方を告知
(7)特売比率面・・・・・・・・・・・エンドなど特売と定番との比率関係
(8)商品導入・カット基準面・・全国・エリア・商圏・自社内比較など

フェイス数の数え方は以下の通りです。

横に数えます。

(2000/2/9)

MD-ing講座17

ゾーニング

第三段階の「ゾーニング」について説明いたします。
どう分類するかが決まりましたら、それぞれの商品群を棚のどこに、どれぐらいのスペースを取り、どう配置するかのステップに入ります。
これを「ゾーニング」の決定といっています。
ポイントは、

(1)それぞれの商品群の売上げに応じたスペース配分
(2)それぞれの商品群をまとまったブロックにして配置
(3)バーチカル陳列とホリゾンタル陳列の組み合わせ陳列
(4)ゴールデン・ゾーン配置
(5)棚本数が長くなる場合、棚ごとのまとまりとストーリー性

具体的に説明いたします。

(1)それぞれの商品群の売上に応じたスペース配分

それぞれの商品群の売上金額、売上数量、粗利金額などの合計値から、それぞれの商品群の構成比を求め、その比率に応じてスペースを棚上に配分する事を言います。

(2)それぞれの商品群をまとまったブロックにして配置

それぞれの商品群の中をサブカテゴリーに分け、そのサブカテゴリーを一つのまとまりとして棚上に配置する事を言います。
顧客の視野は、縦10~20cm×横70~80cmと言われています。
この範囲を一つのブロックと考えて商品陳列をします。

(3)バーチカル陳列とホリゾンタル陳列の組み合わせ陳列

店内における商品探索の際、顧客の目は先ず、縦に止まります。それから横に流れると言われています。
つまり、サブカテゴリーを先ず縦に陳列し(バーチカル陳列)、次にサブカテゴリーの中を横に陳列する(ホリゾンタル陳列)と顧客の目線をコントロールでき、結果売上の増大に結び付く事になります。

(4)ゴールデン・ゾーン配置

棚上で商品を、一番見易く、取り易いポジションは床から80cm~150cmの所です。この範囲を「ゴールデン・ゾーン」と言っています。なにしろあるカテゴリーの棚の前に立ち、商品選択をする時間は約8~12秒と言われています。この時間を商品数で割ると商品一個当たりの時間が出ます。例えば商品が棚上に80SKUあり、12秒間棚の前に居たとすると、1SKU当たり0.15秒しか見られていないことになります。 つまり、ほとんど見られていないことになります。故に見易いゴールデン・ゾーンにどのサブカテゴリーを、どの商品を配置するかで売上が変化してしまうのです。

(5)棚本数が長くなる場合、棚ごとのまとまりとストーリー性

一つのカテゴリーで棚が数本と長くなる場合、それぞれの棚ごとにサブカテゴリーをまとめる事。
そして主通路からの動線、副通路からの動線を考慮にいれながら、どんな順番にサブカテゴリーを並べるかがそのカテゴリーのストーリー性に関係してきます。
例えば、あるカテゴリーがABCDEFと 6つのサブカテゴリーに別れていたとします。主通路からのABCDEFと並べるアイデア、CFEBACと並べるアイデアと色々考えられるわけです。

以上が基本の考え方になります。しかしあくまで基本である、と言う事です。
スペース配分にしても計算通りにするのではなく、Aというサブカテゴリーは最近伸びつつあるので計算上は12%だが、思い切って20%にスペース拡大を、といった事があるわけです。
要は、自店はどうしたら競合と差別化でき、顧客に喜ばれる売場作りができるかの仮説を組み立てるかです。

(1999/12/08)

MD-ing講座16

棚割の4大要素・グルーピング

第二段階の「グルーピング」について説明いたします。
何を売りたいかが決まりましたら(品揃えの方向性の決定)、どう似ている商品を、

(1)探しやすく。
(2)見やすく。
(3)使用場面がイメージしやすく。
(4)商品の差異が分かりやすく。

分類するかが「グルーピング」の課題になります。
つまり商品の持っている属性の中で、似ている項目を選択し、(1)~(4)に合うように括り直すことをいいます。ポイントは、

(1)商品マスターの属性項目内容をどんな基準で決めるのか。

まず消費財・生産財による区分があります。

消費財は、

a.最寄り品
b.買い回り品
c.専門品

生産財は、

a.主要装備品
b.付属装備品
c.業務用消耗品
d.原材料

次に、流行による区分があります。
流行商品と恒常商品です。

次に、製造に関する区分です。
メーカー別・デザイン別・色別・サイズ別・容量別・素材別・産地別・容器別・形状別・賞味期限別などです。

次に、仕入先による区分です。
メーカーダイレクトと代理店経由です。

次に、販売に関する区分です。
販売量別と価格帯別です。

次に、消費に関する区分です。
用途別・客層別・使用方法別・時間帯別・シーズン別などです。

(2)自社の業態特性が活かされているか。

自社の業態特性は何か、つまり主力商品・準主力商品・補助商品は何かを決めることです。「この商品を購入するなら”あの店”」と思ってもらえる程に強い商品を持つことです。

(3)商圏特性の把握レベル。

誰を顧客として設定しているのか、また慣習的な特性はどうなのかなどです。

(4)競合店舗との差別化レベル。

競合店とは分類上何が差別優位性になるのか。

以上が基本の考え方になります。分類が決まりましたら今度は、分類した商品群をどう組み合わせるかです。
これについては、次回「ゾーニング」で詳しく説明致します。

(1999/09/30)

MD-ing講座15

棚割の4大要素・品揃え

そもそも「棚割の目的」とは何でしょうか。「何のために棚割をする」のでしょうか。”顧客ターゲットに合った、このような生活をしてもらうためには、このような商品が必要である”を前提に、それぞれの商品が、(1)品切れにならないよう、(2)過剰在庫にならないように、”店舗が開いている間、お客様に向かって一番良いフェース面を見てもらうように棚上に配置されていること”と言えるのではないでしょうか。
一昔前までは、倉庫の在庫管理と同じ考え方で棚割に取り組む小売業が多かったのですが、最近では、商品管理の一部として顧客と商品が売場で出会う非常に重要な場として、棚割を考えるようになってきました。この目的を達成するためには、

(1)品揃えを企画 → (2)グルーピングを決定 → (3)ゾーニングを決定 → (4)各商品のフェイス数を決定というプロセスがポイントになります。

まず第一の「品揃え」について説明します。「品揃え」の目的は、ターゲット顧客に”何を”売りたいのかを決めることです。
ポイントは、ある商品カテゴリーで店の主張を顧客に理解してもらう商品選択をどう考えるかです。

1.店の主張は何か
2.売場のコンセプトは何か
3.品揃えのコンセプトは何か
4.価格政策は
5.実販売数量・売上・利益動向は
6.市場の規模と成長性は
7.各メーカー動向は
8.各商品動向は
9.全国での扱い状況は
10.エリア内での扱い状況は
11.商圏内競合店舗の扱い状況は
12.商圏内消費者消費動向は

を十分検討することです。

「品揃え」を考える場合のもう一つのポイントがあります。
それは「品揃え」改善時のデータ活用の部分です。
自店の「品揃え」チェックをする場合に基準になるのがPOSデータと商品属性データです。
POSデータは結果データです。自店舗の、自店に置かれている商品のみのデータです。この自店POSデータだけでは顧客の変化に対応した「品揃え」を維持するには限界があります。例えば、全国的に見た場合、出店している商勢圏内で見た場合、自全店平均で見た場合など比較検討することで客観的に判断ができる訳です。
商品属性データについては、分類基準をどう設定するかがポイントになります。例えば、原料特性から、容器特性から、メニュー特性からと色々な切り口が考えられます。この切り口を自店の顧客特性に合わせたら何がベストなのか、あるいは、競合店舗と差別化する場合どう切り口を構築するのかといった時の基準になるものです。属性マトリックスを作成しブランク部分を探し、商品を追加するなどが効果的な使い方です。

以上、「品揃え」について説明しましたが、顧客ターゲットを明確に設定し、何が必要なのかを決めることが第一のポイントになります。第二に、時間の経過と共に「品揃え」を変化させていかなければマンネリ化し、魅力のない店になってしまいます。
「品揃え」を改善する場合、過去のデータとはいえPOSデータの活用と商品属性データの活用がポイントになります。

次回は「グルーピング」についてです。

(1999/08/11)

MD-ing講座14

陳列方法

今回は陳列方法です。代表的な陳列方法について以下に説明します。

 

バーチカル陳列(垂直陳列)

商品間の品質に差がない、またアクセント・カラーコントロールする場合で、同一商品群や関連商品を最上段から最下段まで”縦”に陳列する方法。

 

ホリゾンタル陳列(水平陳列)

商品間の品質に著しい差がある場合で、商品を棚板に横に並べて水平に配列する陳列方法。

 

フォワード陳列(前進立体陳列)

棚板の前面に商品の陳列面を出し、盛り上がった感じに見せる陳列。

ジャンブル陳列(投げ込み陳列)

選り取り均一セールのようなバラエティーの楽しさを訴求する場合で、ジャンブルケース、ワイヤーケース、籐かご、平台、などに商品をランダムに投げ込む陳列。

サイド・スタッフ陳列(ソデ陳列)

エンドのテーマに沿った商品を、または関連商品をエンドの脇に置く陳列方法。

ピクチャー・ウィンド陳列(額縁・窓陳列)

ある商品ゾーンを際立たせる場合の陳列。

アイランド陳列(平台・島陳列)

催事コーナーの訴求と通路の回遊性を高めて、量販を実現するための陳列。

イクステンダー陳列(張りだし陳列)

棚板自体が張り出している場合・棚板自体を張り出す場合・棚板に器具を取り付ける場合があり、いずれも商品あるいはゾーンを際立たせる陳列。

スロット陳列(細長・溝陳列)

ボリューム陳列によるディスカウント訴求を実施する時に用いる。ゴンドラの中央付近の棚板をすべて取り外して縦長の空間(溝)を作る陳列。

ブレークアップ・ライン陳列(段違い陳列)

ゴンドラが長くなると陳列が単調になりやすいので、ゴンドラの一部分に段違いの棚の区画を作る陳列。

 

カラーストライプ陳列(縦型配色陳列)

商品・パッケージの色を上手に利用して、陳列面に縦に色の縞模様を作る陳列。

 

トレイパック陳列(皿陳列)

商品の入ったダンボールの底の部分だけを皿(トレイ)状に切り残し、そのまま配置する陳列。

ライトアップ陳列(右上がり陳列)

同一商品の場合は容量の大きい方を右側に陳列。

パイル・アップ陳列(積み重ね陳列)

商品を高く積み重ねることによって、少ない商品を立体感とボリューム感のある様に見せる陳列。

プッシュ・アウト陳列(突き出し陳列)

特に訴求したい商品のみをゴンドラや冷ケースの陳列ラインより前面の通路側に突き出して商品の露出度を高め回転率を上げる陳列。

ウォーターフォール陳列(滝陳列)

滝が流れるように商品を高いところから流れ落ちるように並べる陳列。

シャワー陳列(水流陳列)

水の流れるイメージで陳列し、商品のクオリティーを訴求。

ライン陳列(線状陳列)

商品を寝かせて”線状”にし、商品や売場へのアイキャッチャ効果を高める陳列。

ステップ陳列(ひな段陳列)

トレイパック商品・箱もの・缶詰など、3段以上の階段状に積上げる陳列。

インクリネーション陳列(傾斜陳列)

商品を斜めに陳列し売場に変化を作り、視認率を高め売上を上げる陳列。

(1999/06/15)

MD-ing講座13

棚割

今回から、棚割についてです。

棚割について論ずる前提として、棚陳列の販売力要素・陳列の原則・陳列の基本・陳列手順について整理しておきます。

1.棚陳列の販売力要素

棚上における販売力は、商品力と陳列力の二つの要素に分割されます。 商品力は、価格的要素とブランド、機能、知名度といった品質的要素で構成されます。 陳列力は、陳列の位置、つまり棚のタイプ(垂直ゴンドラ・L型ゴンドラなど)棚の段数、棚の左右(どんなカテゴリーが当該カテゴリーの左右にきているか)によって。陳列される商品の量(フェイス数・商品サイズなど)によって。陳列手法(バーチカル陳列・ホリゾンタル陳列・ブロック陳列など)によっての3つの要素で構成されます。 以上の構成要素が整っている時販売力は高まるのです。

2.陳列の原則

そもそも商品を陳列するのは何のためでしょうか。小売業のマーケティング目標(顧客ターゲット・売上・利益・市場シェアアップ・マインドシェアアップ)を達成するためです。主役は、商品です。
そうすると

(1)顧客が求めている商品を
(2)見易い場所に
(3)効率的・効果的に並べ
(4)関心のない顧客にも興味を持たせ
(5)購買行動を起こさせる

ように陳列することです。具体的に述べると、

(1)何を
(2)幾つ
(3)どこに
(4)高さは
(5)フェイス数は
(6)陳列器具は
(7)陳列の型は
(8)関連性は
(9)カラーコントロールは

になります。

3.陳列の基本

陳列の基本は

(1)商品に注目させる
(2)商品に関心を持たせる
(3)欲求を起こさせる
(4)商品を購入する事が得である事を確信させる
(5)購買行動を起こさせる

つまりは、見易く、触れ易く、選び易い。そして豊富感があり、魅力的であり、効率的であることです。
このように陳列をすると、

(1)来店動機を促進
(2)衝動買いを促進
(3)ついで買いを促進
(4)ストック買いを促進
(5)来店客数の向上
(6)客単価の向上
(7)固定客の増加
(8)適正利潤の確保

4.陳列手順

先ず商品の分類、構成がポイントです。誰を顧客に設定し、その顧客をターゲットにした場合どんな生活シーンを想定し、商品の組合せを提案するかです。
次に、棚上の陳列ゾーンによる商品配分です。
例えば、

(1)床から80cmぐらいまでを、売れ筋商品の大量陳列あるいは子供向け商品のスペースに。
(2)80~140cmぐらいまでを、売れ筋商品あるいは利益商品のスペースに。
(3)140~170cmぐらいまでを、店のイメージ商品あるいは、新商品スペースに。 というように決めていきます。

以上4項目を前提に、棚割について説明していきます。

(1999/04/15)

MD-ing講座12

在庫管理・その2

今回は、数量による在庫統制についてです。

2.ユニットコントロール(数量による在庫統制)

数量による在庫統制には、次の3つの特徴があります。

(1)商品の物量単位(個数・枚数・グラム数)によって在庫統制をする。
(2)金額による在庫統制では把握し得ない商品の具体的動きを明らかにし、金額による在庫統制を補完する。
(3)商品管理者あるいは仕入担当者など、現場にとっての具体的な業務手段となる。

次に具体的実施内容について解説します。

(1)棚卸法
商品の在庫数量について実地棚卸を行い、在庫数量の推移から売上数量を逆算する方法。

前月末棚卸数+当月仕入数-当月末棚卸数=当月売上数

(2)継続的記録法
継続的記録法は、手持ち数量を変化させるすべての要因を継続的に記録していく方法。販売数量・仕入数量・顧客からの返品・仕入先への返品など、商品に関する数量の増減のすべてを発生のつど(通常は1日単位)記録して在庫数量を求めていく。継続的記録法を正確に実施するためには、 基になるデータを入手しなくてはならない。この場合、仕入データよりも販売データの入手が課題になる。販売データの入手方法は、

A‥‥売上伝票による方法
売上のつど、売上伝票に品名・サイズ・型・価格・数量などを記入し、毎日あるいは一定期間ごとに集計・分析・記録していく方法。

B‥‥二片式値札による方法
真ん中にミシン穴が開いていて、二片に切り取りできるようになったカードを商品に付けておき、商品が売れた時点でカードの一片を切り取って保管し、後で金額や数量を計算する方法。カードには、商品番号・価格・品名・サイズ・色・型・仕入れ先・仕入年月日などが記入されている。

C‥‥倉出伝票による方法
比較的大規模な商店で、売場の商品とバックルームにある補給用の予備商品が、場所的にも管理上も明確に区分されているような小売店で採用されている。予備商品がバックルームから売場に搬出される際に倉出伝票を発行し、これを持って在庫減、すなわち販売されたとみなす方法。この場合、売場の商品在庫を一定にしておき、販売された商品が毎日バックルームから倉出伝票をもって補充されることが制度化されているという前提が必要である。在庫統制の記録は、売場でなくバックルームで行われる。

D‥‥満棚法
売場における陳列量を一定にしておき、売れた時に補充して、補充した数量を持って売上数量とみなす方法。

E‥‥POSシステムによる方法
Point Of Sales Systemの略で、「販売時点情報管理システム」と訳されている。販売時点にコンピュータを利用して即時に売上データを作成し、商品管理を有効に行うもの。具体的には、商品の値札の一部に商品名・種類・型・色・柄・サイズ・容量・価格などをコードにして印刷し、販売時点でペンなどの読取装置でその値札をなぞると、それらのデータが一瞬にして読み取られるもの。読み取られたデータは中央のコンピュータに繋がり、それによって商品の在庫や仕入れ、売上高など各種の分析と最新のデータが得られる。

最後に在庫統制の比較表を下に示します。

次回からは、棚割についてです。

(1999/02/09)